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「50歳から加齢で疲れやすくなった」は絶対放置してはいけない…大学病院の医師が教える"更年期障害の真実" | ニコニコニュース

加齢により発症する更年期障害とはどう向き合えばいいか。鳥取大学病院医学部附属病院の医師によると、更年期の性ホルモン減少が「骨粗鬆症」の発症リスクを高め、更年期障害だと思い込んでいた症状は別の原因であったりするため、正しい治療法を知り発症のサインを見逃さないことが大切だという。更年期の最前線をリポートする――。

※本稿は、鳥取大学医学部附属病院広報誌『カニジル 16杯目』の一部を再編集したものです。

■更年期を迎えるとエストロゲンが急激に減少し起こること

そもそも更年期障害とは何か――。

女性ホルモンの分泌が始まると月経が始まる。ホルモン分泌は20歳頃にピークを迎え、20~30代で安定する。その後、40代半ばを過ぎた頃から急激に分泌量が減少、月経周期や経血量が不安定になり、やがて閉経を迎える。

更年期障害とは、すなわち卵巣機能の低下による性ホルモンの減少が心身に及ぼす様々な症状である。

卵巣から分泌される女性ホルモンには、「エストロゲン」と「プロゲステロン」の2種類がある。前者のエストロゲンは女性にとって最も重要なホルモンであり、自律神経を整える、肌や髪のツヤの維持、血圧を下げる、コレステロール値の調整、骨の形成を促すといった役割がある。

この骨の形成にまつわるエストロゲンが、「更年期」と「健康寿命」について考えるうえで重要なポイントとなる。骨粗鬆症である。

「現代の日本では普通に食べていれば、カルシウム不足になんかなりません。エストロゲンの急激な減少の方が影響は大きいです」と言うのは、とりだい病院女性診療科の谷口文紀教授だ。

我々の体内では、古くなった骨を分解する「破骨細胞」と新しい骨を作る「骨芽細胞」の代謝サイクルで日々新しい骨へと入れ替わっている。

この破骨細胞の働きをコントロールする役割を担うエストロゲンが、更年期を迎えると急激に減少していく。骨吸収のスピードが骨形成を上回ると、骨密度の低下へとつながるのだ。

骨粗鬆症で骨折が起こりやすい部位の1つが大腿骨頚部です。この骨は脚の付け根、股関節からすぐのところにあります。転倒などのふとした弾みで折れてしまうと立つことも歩くこともできない。老年期であれば、動けない期間で運動機能の低下が進み、寝たきりになってしまう」

■医師が「女性は50歳前後で骨密度検査を」と勧めるワケ

この骨粗鬆症の予防には骨吸収を抑制し骨形成を促す薬剤治療がある。しかし、急激に減ってしまった骨量を取り戻すことは難しい。

「残念ながら80歳くらいから治療をしたとしても、骨は急に作られるわけじゃない。女性は更年期を迎える50歳前後で一度、骨密度検査を受けることをおすすめします」

更年期障害の治療には、閉経によって減少したエストロゲンを補うホルモン補充療法(HRT)がある。

「ホルモン療法への抵抗がある方も多いかもしれませんが、HRTで補充するエストロゲン量は月経不順や子宮内膜症の治療で使用される低用量ピルの約8分の1ほど。実際に月経があった頃に体が作り出していたホルモン量と比べてもわずかな量に過ぎません」

HRTには、内服薬、貼り薬、塗り薬といった様々な処方がある。症状や続けやすさなどを考慮し、自分にあった処方を選択できる利点があると谷口教授は言う。

ちなみに、更年期症状の治療は健康保険適用内となり、安価での薬物治療が可能である。

HRTの使用推奨期間は5年以内である。もう1つの選択肢となるのが漢方薬だ。更年期症状のピーク時にはHRTと漢方薬を併用、使用終了後も症状がきつい場合は漢方薬のみ服用に切り替える方もいる。

■男性ホルモン「テストステロン」のピークは20代

更年期障害に悩まされているのは女性だけではない。

「女性には閉経という急速に女性ホルモンが低くなる時期があります。一方、男性にはそういった契機がはっきりとないので分かりにくく、認知度が低いんです」

こう語るのは、とりだい病院泌尿器科で男性更年期治療に携わる本田正史准教授である。男性の更年期障害は、「LOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)」とも呼ばれる。

原因となるのは精巣で作られる男性ホルモン「テストステロン」の減少だ。

「テストステロンの分泌量のピークは一般に20代で訪れます。それを過ぎると分泌量が徐々に下がっていきます。女性は更年期でがくんと下がる。男性は加齢とともにゆるやかに下がっていくのが特徴。更年期くらいの年齢になるとLOH症候群となって現れます」

テストステロンには、筋肉をつくる、気持ちを前向きにするという働きがある。テストステロンの減少は、不眠や鬱のような精神的な症状から、筋力低下や疲労感、ほてり・発汗、性機能の低下といった身体的な症状につながる。

検査の結果、男性更年期障害と判明した場合はやはり薬物治療に入る。

「患者さんご本人が納得されたら、ホルモン補充療法として2~4週間に一度の注射からスタートです」

このホルモン補充療法も保険適用範囲である。HRTと違うのは、テストステロンの補充療法の開始は更年期の時期に限らないことだ。

ただし、更年期障害のようだから、安易にサプリメントに頼らないでほしいと本田は警鐘を鳴らす。

「ホルモン系の薬の中でも特にテストステロンを含むものは肝機能障害を起こしやすい。原則、日本国内では男性ホルモン系の経口薬は使われておらず、輸入品も含め医師の処方でないものはおすすめしません」

沈黙の臓器とも言われる肝臓は、悪化してからでないと気付かないことも多い。更年期障害を和らげるつもりで、別の臓器を痛めつけては意味がない。

男性更年期障害の症状は、加齢による体力低下、鬱、あるいは新型コロナ後遺症とも重なる。そのため自己診断は難しい。

■「どうせ加齢だから」に潜むリスク

自己診断は避けたほうがいいというのは男性も女性も同様だ。

ホルモンに関する疾患が専門のとりだい病院内分泌代謝内科の伊澤正一郎学部内講師によると、更年期症状の相談に来られた方が、甲状腺疾患など性ホルモン以外のホルモンの病気だったという例が少なくないという。

甲状腺疾患は、ちょうど更年期に差しかかる年代の方にも多いんです」

首のやや下側に存在する甲状腺から分泌されるホルモンは、血圧、脈拍、体温――つまり基礎代謝の維持が主な役割だ。この甲状腺ホルモンが増えると代謝機能が活発になり、汗をよくかく、動悸といった症状が出るのだ。

更年期障害と甲状腺疾患の見極めの1つは体重の増減である。

「更年期は代謝が落ちて逆に太りやすい時期。特段なにもしていないのに、体重が1カ月で例えば、2、3キロ減ることは考えにくい。急激な体重の変化や首の腫れがあった場合、内科の受診をおすすめします」

更年期障害の症状は他の病気でも起こりうる症状だ。たぶん更年期だろう、そんな油断が別の病気を放置することにもつながりかねない。

更年期の症状は、症状やつらさも人それぞれだ。特段の症状もなく平穏に過ごせる人もいれば、日常生活に支障が出るほど症状がつらい人もいる。

「このくらいで病院にかかってもいいのだろうか」「どうせ加齢のせいだから」、そんなふうに悩むことがあれば一度婦人科や泌尿器科を受診してみてほしい。

日本人の平均寿命は2022年時点で、男性で81.05歳、女性で87.09歳。

一方、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる“健康寿命”は男性72.68歳、女性75.38歳である。男女ともに約10年前後の開きがある。

人生100年時代のこれからをいきいきと自分の脚で歩むためには、健康寿命の延伸が必要不可欠。このために「更年期」の過ごし方が重要になるのだ。

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/maruco

(出典 news.nicovideo.jp)

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