先日Twitter上で、“球場でのゴミ拾い”に関する投稿が注目を集めた。
その投稿は、野球場で“ゴミを袋にまとめて捨てる行為”をやめてほしい、という球場のスタッフAさんからのお願いがつづられたもの。まとめられたゴミは球場スタッフが回収し、袋を開けて中身を分別し直さなければいけないのだという。
しかし、袋にまとめられたゴミのほとんどがいろいろな種類のゴミが混ざった状態。そのため、Aさんは分別がとても大変だと訴えていた。
自主的にゴミをまとめる人の姿がSNS上で話題になることもあり、好意的な反応が寄せられることがほとんど。しかし、善意でしていることが、球場で働くスタッフの負担を生んでいるかもしれない……。
そこで、本誌はAさんに“投稿した理由”を詳しく聞くために取材を申し込むと、Aさんは書面で回答してくれた。
■袋のなかに嘔吐物やダメになった食べ物が……
Aさんのいう「球場でゴミをまとめている人」とはどういった人のことを指すのだろうか?
「これは“試合の後などに、1つのゴミ袋に燃えるゴミやペットボトル等を分別せずにまとめて捨てに来るかた”という意味です。例えば床に落ちているゴミなど、目に付いたゴミをまとめるかた。もしくは自分の隣の席だけでなく、自分の席の列やブロックなどのゴミをまとめる方もいらっしゃいます」
Aさんは「ゴミをまとめてくださる方は、球場の美化を意識してくださっているんだろうと思います。球場スタッフの負担が減ると考え、善意でして下さっているとも思います」という。では、なぜ「やめてほしいです」とツイートしたのだろうか?
「“言い方がよくない”といった返信も受けたように、確かにあの投稿は私の愚痴でした。ただ投稿日の前日、ある特定球団ファンの方がごみ拾いをしたというツイートを見かけました。それは1つの袋にゴミを集めるというもので、『ファンの鑑だ』『自分たちもやろう』というリプライや引用RTも散見されたんです」
Aさんの働く球場では試合終了後、スタッフは全員ゴミの分別に参加することになっている。その際、Aさんたちはゴミ置き場や回収したすべてのゴミ袋を開けて、薄い手袋をはめて、そして燃えるゴミや燃えないゴミ、びんに缶にペットボトル、食べ残しや飲み残しを分別しているという。
「少しでも負担を減らすために、燃えるゴミの班と燃えないゴミの班に分かれてゴミを回収し、分別しています。ですが、数万人規模の球場です。ゴミの量が非常に多いため、毎回終電までかかってしまうんです。終電を過ぎても作業をしているかたもいます。
一つの袋にゴミをまとめてくださっても、分別する際に全部ほどく必要があります。作業が増えるだけでなく、何が入っているか分からないために神経を使います。例えば飲み残しで服が汚れたり。最悪の場合、嘔吐物や時間が経ってダメになった食べ物といった汚物にも当たります。それを処理するのも、私たちの仕事です」
■分別した上で、ゴミをまとめて持ってきてほしい
そういった仕事をこなすうちにAさんは、前述のように、1つの袋にゴミをまとめることを讃えるような投稿を発見したのだ。
「班で分かれてゴミを回収すれば工数削減になるのに、個人で何でもかんでも分別せずにまとめられた袋が増える。私たちはそれを全部ほどいて分別しなければならない……。直観的に『やめてくれ!』と思い、当該ツイートを投稿しました」
Aさんは「『お客様が善意として行っていることが、球場スタッフにとってはそうでないこともある』と、もっと伝わればいいなと思いました」と述べる。そして、こう“お願い”した。
「ベストなのは、お客様それぞれがゴミ箱に分別して、ゴミを捨てていただくことです。分別してある分、こちらの手間も省けます。
また自分のものではないゴミを見つけた場合も、分別した上でゴミをまとめて持ってきていただけたらと思います。いっぽうで球場からお客様がご退場されない限りこちらも動けないので、恐縮ですが、速やかなご退出も心掛けていただけたらと思います」
最後に、Aさんは「今回お話ししたことは球場スタッフを代表する意見ではなく、あくまで私個人の意見として受け止めて欲しいです」といい、こう結んだ。
「球場での仕事は楽しく、今回の件で自分がスタッフとして働いている球場を責めるつもりはありません。また、分別してゴミを捨ててくださるお客様にはいつも感謝しています。ただお願いばかりで申し訳ないのですが、“こういう声がある”と覚えておいていただけたら有難いです」
<このニュースへのネットの反応>
ゴミの片づけに終電過ぎまで作業がかかるならそれは単純に人員不足。客にゴミまとめないでと言うより先にすべきことがあるんだよなぁ。労働者の団結力が弱い日本。
旅館で布団やタオルをきちんとたたむのがかえって旅館の迷惑になるのとよく似た話。日本にはこの手の善意の迷惑行為が多い。
燃えるゴミで纏めりゃいいのに無駄に分別なんかしてるからだろ
ごみの分別ねぇ・・・。今の日本の細々とした分別方法を実行出来る人がはたしてどれほどいることか。