
「留置場で思いついた」“低評価店グルメリポート”が話題のホストTikTokerを直撃 | ニコニコニュース
1人ひとりの個性が認められるようになった現代社会。日本最大級の繁華街・歌舞伎町においても、さまざまなジャンルのホストが登場している。主だったところを挙げると、“アイドル系ホスト”、“ちょい悪系ホスト”、まるで女の子のような“可愛い系ホスト”、犬のようなふんわりとした柔らかい雰囲気をもった“犬系ホスト”といったところだ。

他には“脱力系”ホストというジャンルも存在し、このなかで最も勢いのあるのがホストクラブ「金夜叉~ZERO~」に所属する、あすいるるさん(26歳、@Ruru8v6)だろう。
月間2500万円を売り上げる、れっきとした売れっ子ホストのあすいさん。独特なペースにおもわず引き込まれるような接客もさることながら、自身のTikTokアカウント(@ruru8v6)では「低評価店」のグルメリポーターとして、最高再生回数830万回(2023年2月現在)の動画を生み出し、クリエイターとしての実力も存分に発揮している。
今回は、あすいるるさんにホストになったきっかけやTik Tokを使った新たな営業メソッドを語ってもらった。
ニート生活を3年半送った
「高校卒業後、3年半のニート生活を経てホストになりました。アルバイトもしたことがないので、初めて就いた職がホストだったんです」
そう語るあすいさんは、ニート生活の間、「せどり」で生計を立てていたという。
「何気なくメルカリやアマゾンを見ていたら、同じ商品を安く大量出品している人の存在に気が付きました。ふと、『この人たちはどこで商品を仕入れて販売しているのだろう』と興味をもって調べたところ、自分でもできそうだと思って始めてみたんです」
気づけば最高月商は60万円に達しており、平均すると40万円ほど売上げていた。
ホストとして働くことを即決

金銭的に不自由のない暮らしをしていた彼がホストの道に進むきっかけとなったのは、友人の何ない一言だった。
「友人の女の子に『この人がすごくイケメン』とホストの写真を見せられたんですが、動物のビーバーをオマージュした某アニメキャラクターにそっくりだったんです。なのに、僕よりもそのホストのほうがかっこいいと言われたことが本当に悔しくて……」
見知らぬライバルに触発されて、その日のうちに池袋にあるホストクラブの門を叩いたのだそうだ。
「はじめは体験入店からスタートしたのですが、すごく楽しくて胸が躍りました。ホストには、上下関係が厳しくて怖いイメージもありましたが、思いのほか優しい方が多かったです」
名物コンテンツは“留置場発”
入店後は、売れるための努力を惜しまなかったとのことだ。
「100円の飲み物に数千円の付加価値をどうやってつけるかと、新人のときから考えていましたし、集客のためのナンパにも力を入れていました。回数をこなすうちに羞恥心がなくなって、1日8時間ほど声掛けをしていましたね」
ホストを始めてから3年半ほどが経過したある日、人生を一変させる事件が起こる。
「お客様とトラブルがあり、1日だけ留置所に入ることになりました。留置所って本当に何もないんですよね。普段であればお客様と連絡を取るのにスマホが欠かせないのですが、もちろん使うことはできません。とにかく色々なことを考えました」
目をつけたのは「低評価の飲食店」

これまで、ホストとして大成するためにがむしゃらに走り続けていたあすいさん。キャリアを立ち止まって振り返り、自問自答する機会になったのがまさか留置場とは、何とも皮肉な話でもある。
しかし、結果としてこの「デジタルデトックス期間」が転機になったのだ。知名度を上げるための施策をひたすら練り続け、たどり着いたのは「TikTokでバズること」だった。
留置所から出てしばらくが経過したある日、先輩との食事の約束のために飲食店を探していると、好奇心を揺り動かされる飲食店が目に留まったという。
「レビューサイトでユーザー評価が1.0のお店があったんです。他の店はだいたい3.0くらいなのに、どうしたらこんな低評価が付くんだろうと(笑)」
想像の10倍は動画が再生された
この店に行けば面白いコンテンツが作れる……そう確信したあすいさんは先輩と共に「低評価店」に足を運んだ。勘は見事に的中し、低評価店をレポートする内容の動画は、TikTokで約600万回も再生された。店の実態はというと、案の定評判通りで散々な思いをしたそうだ。
「2398円のカニの刺身を注文したのですが、小さなカニの足が2本、凍ったままの状態で提供されました。味も生臭いし……。もちろん他の料理も注文してみましたが、どれも価格と見合わないクオリティで……。
『不味くて高いものを食べて反響が一切なかったら最悪だね』と先輩と笑いながら話していたものの、想像の10倍は動画が再生されたので僕自身もびっくりしました。ここまでバズった理由は分からないのですが、自分でお金を払ってまでは体験したくはないけれども、低評価店を疑似体験する“怖いもの見たさ”を満たしているのかなと。
また、クリエイター側の視点でいうとTikTokはYouTubeとは違って、ライブ配信での投げ銭がメインの収益となり、純粋な動画の再生回数だけでは収益化ができません。そのため、まだクリエイターが少なく、誰も本格的に参入していないジャンルでコンテンツを作ったことがバズった理由なのかもしれません」
経費は有名になるための投資
最近では街で声をかけられることも増え、TikTok経由で指名に繋がった人は数十名ほど。徐々に反響が結果に結びつきある。
訪れた都内の低評価店はすでに40店舗に達し、まだ見ぬ低評価店を求めて地方にまで裾野を広げている。
「動画を撮りに北海道まで行ったこともあります。交通費や食費はかさみますが、全てはホストとして成功するための自己投資だと考えています。いろいろな店をまわる中で、普段当たり前だと思っていたことが、お店側の気遣いによって実現されていることに気がついたのも収穫です。ドリンクに刺さっているストローが飲みやすいように折られているだけでも嬉しい気持ちになりますね(笑)」
目標は年間3億円を売り上げること

あすいさんにとってホストという職業は、大好きなFPSゲームをクリアしていく感覚に近いそうだ。
「FPSで1番上のランクになりたくて、24時間ゲームをして12時間休んで……といった生活をしていたこともありました。当時ゲームに注いでいた熱量を、今はホストの仕事に注いでいます。ハマると突き詰めてしまう性格なので、ホストとして成功すること以外は考えていないです」
大成するための努力を惜しまないあすいさんの目標は、「歌舞伎町で1番有名なホストになること」。まずはホストとしての大台でもある“年間売上1億円”を目指し、最終的には3億円を売り上げたいと話す。
「ホストとしての寿命はすごく短いものだと思っているので、ホストを卒業したら1つの人生が終わるくらいの気持ちでいます。なんなら死んでもいいと思っています」
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寅年の2023年に「狼貪虎視」の精神で歌舞伎町をサバイブするあすいるるさんの活動に注目したい。
<取材・文/夢見リオン 編集/ヤナカリュウイチ(@ia_tqw)>
【夢見リオン】
普段はベンチャー企業のなんでも屋会社員。夜の世界で働く人々のキャリアを取材する。自身もれっきとしたホス狂い。フットワークは人一倍軽い Twitter:@miitann1212
