【漫画】結婚後も、自分の苗字を変えたくない…… ある女性が事実婚を選ぶまでの記録に「色んな形があっていい」「選べるのが普通な世の中に」と反響 | ニコニコニュース
ある女性がパートナーと事実婚に至るまでの経緯を描いた漫画がInstagramに投稿され、記事作成時点で1万4000件の“いいね”を集めるなど話題になっています。二人が事実婚を選んだ理由とは……?
投稿者は、キクチさん。夫婦同姓になる法律婚ではなく、別姓のままとなる事実婚を選択したキクチさんは、事実婚を選んだ理由について漫画で紹介しています。
法務省が令和3年に実施した世論調査では、婚姻後の名字のあり方について、「現在の制度である夫婦同姓制度を維持した上で、旧姓の通称使用についての法制度を設けた方がよい」と答えた人が42.2%、「選択的夫婦別姓制度を導入した方がよい」が28.9%「現在の制度である夫婦同姓制度を維持した方がよい」が27.0%という結果に。婚姻後の旧姓使用や、選択的夫婦別姓についての議論が進められる中、キクチさんはどのような理由で事実婚を選んだのでしょうか。
●結婚への二つの違和感
キクチさんは子どものころ、自分が大人になったら当たり前に結婚して、子どもも絶対に産むものだと思っていました。しかし、年齢を重ねるにつれて、多様な生き方があることを知るようになりました。自分の理想とする生き方について心に問うようになったキクチさんは、自分の中の一つ目の違和感に気づきます。それは「子どもが苦手」だということ。
「そうか、私、子ども欲しくないかも」。自分の気持ちと向き合いながら、子どもを欲しがらないのは少数派だろうと思ったキクチさん。そんなとき、いまのパートナーと出会ったのです。ある日、パートナーに自分の気持ちを伝えたところ、彼も子どもが苦手だということが分かり、キクチさんは初めて共感してくれる人が現れたことをうれしく感じたといいます。
それからパートナーと共に日々を重ね、結婚を意識するようになったキクチさん。しかし、ここでキクチさんは二つ目の違和感に気づきます。それは自分が「苗字を変えたくない」ということです。現在は、婚姻届を出す際に女性が改姓するのが一般的。しかしキクチさんは、フルネームの名前をほめられたり、母が病気のため余命宣告を受けたりする中で、「家族のつながりを大事にしたい」と思うようになったのです。
●「夫婦になりたい」という思い
それからキクチさんは、自分にとってどんな形の結婚が良いのかを調べ始め、「事実婚」という制度に行きつきました。戸籍上の夫婦である法律婚と事実婚ではいくつか違いがあります。キクチさんによると、特に大きな違いは次の4つ。「子どもには父子関係が生じないので認知の手続きがいること」「夫婦の一方が亡くなったときに相続の資格がないこと」「配偶者を養うときの税制上の優遇が受けられないこと」「病院によっては万が一のときに代理のサインが認められないこと」です。
事実婚のリスクを把握したキクチさんは、どうしても解決できない事態が発生したときは法律婚も検討すべきだと感じました。また、事実婚をするなら、なるべく法律婚と同等の権利を得るために夫婦であることを証明する手続きも必要だと考えます。
そんな中で、同棲と事実婚はどう違うのか? 自分はなぜ結婚したいのか? 深く考えたキクチさんは、自分のある思いに気づきます。それは、「私は『夫婦』になりたいんだ! 人生という一大プロジェクトのパートナーになるという共通認識を持って、死ぬまで生活を共にして生きていきたいんだ!」という気持ちでした。
●お互いに納得して事実婚へ
結婚への思いがはっきりしてから数カ月後、キクチさんはパートナーからプロポーズを受けました。そして後日、改めて事実婚をしたい旨を相談し、二人で話し合うことになったのです。
パートナーは、事実婚だと苗字がバラバラで、婚姻届もないのはさみしい。でも、キクチさんの苗字には変えたくない、という意見。お互いの気持ちを確認し合った二人は、果たして自分たちにとって事実婚がベストなのか、考える時間を設けることにします。その後、事実婚について調べて考えたというパートナーから、「事実婚、いいんじゃないかな」という意外な返事がありました。
パートナーは、苗字が違うことも少数派、子どもを持つ予定がないこともいまの社会では少数派だとした上で、「そうやってどんどん少数派な夫婦になっていこうゼ!!」と、自分たちが少数派であることを前向きに捉えていこうとしてくれたのです。キクチさんは、そんなパートナーの気持ちに感激します。
しかし、自分たちが良くても家族がどう思うかは話が別。そこでお互いの親に事実婚を報告したところ、両家ともにすんなりと賛成してもらうことができました。
また、事実婚について調べるうちに、事実婚をする人は、婚姻届の代わりに世帯合併の届出をすることが多いと分かりました。世帯を合併して同一世帯になると、どちらかが世帯主になり、相手の続柄が「妻(未届)」または「夫(未届)」という表記に。一部では、法律婚と同じようなサービスも受けられるようになります。
その後、キクチさんとパートナーは世帯変更届を出すため役所へ行き、無事届出を提出。そのまま住民票を発行し、記載されている「妻(見届)」という表記を2人で確認して、無事に夫婦となった喜びを噛みしめたのでした。
この漫画には、「色んな形があっていいですよね」「生活や考え方に合わせて自由に選べるのが普通な世の中になればいいですよね」「もっと気軽に別姓で夫婦として幸せに生きていける世の中になって欲しいです」など、多くの共感の声が寄せられています。
●作者に話を聞いてみた
ねとらぼGirlSide編集部では、作者のキクチさんに詳しい話を聞きました。
ーー作品にはたくさんのコメントが集まっています。読者からの反響で印象的なものがあれば教えてください。
キクチさん:「自分の苗字が好きではないから、婚姻をきっかけに変えられるのが嬉しかった」「好きな人の苗字になれて幸せ」というコメントが印象に残っています。私は違う選択をしましたが、その気持ち自体はとても共感するしすてきなものだなぁと思いました。
ーー事実婚を選んで一番よかったことはなんでしょうか。
キクチさん:苗字を変えないし、戸籍も生まれ育ったままになるので、これまで大事にしてきたルーツをそのまま保てることが個人的に大きなメリットだと感じています。
ーー一方で、事実婚のデメリットについて、キクチさんは何が一番問題だと考えていますか。
キクチさん:婚姻によるサービスや制度が適応されにくいこともデメリットですが、それよりも「事実婚ってことは離婚前提?」とか「法律婚しないってことは愛人ってこと?」という事実婚にマイナスなイメージを持っている方がいることです。イメージが変わるとうれしいですが、事実婚を悪用する人もいると聞きますし、なかなか難しい問題だとは思います。
ーー今後、法改正により夫婦別姓での結婚が可能になったら、制度を利用したいと思いますか?
キクチさん:事実婚だと越えられない壁に出会ったときにぜひ利用したいです。いまのところは事実婚で困っていないので「法律婚しておけば良かった……!」と後悔するまでは一旦このままで大丈夫かなぁと思っています。
結婚の形は人それぞれ。夫婦別姓や子どもがいないことなど、少数派といわれる人が困難や生きづらさを抱えることがないよう、私たち一人ひとりが理解を深めるとともに、国民が納得できる制度の確立が望まれます。
キクチさんはこの他にも、InstagramアカウントやTwitterアカウントで多数の漫画を公開中です。
画像提供:キクチ(@kkc_ayn)さん
hara 苗字が先に〜の文化国だからかね?苗字にこだわる人が多いのは。それはともかくとして、自分の都合で法制度にみつくのではなく、自分の都合に見合った制度内で選択するという考え、これが普通だと思うのだが…声の大きい少数派にかき消されそうだよね。 |
はい 夫婦別姓で問題となる「子どもの苗字」については、この夫妻は子どもが欲しくないと言ってるし良いんじゃないかなと。後、現行の苗字統一を主張する人達は是非とも結婚で苗字を変える際の手続きの簡略化を進めて欲しいわ。 |