「子どもが不登校」になったら、親はどうすればいいのか?【公認心理師が解説】 | ニコニコニュース
不登校の子どもの数は年々増えています。そこで今回は、不登校のお子さんを持つ親御さんや、これから不登校になるかもしれないと心配されている親御さんの悩みを解決するべく、元教員で公認心理師/チャイルドカウンセラーのめいさんに、不登校の原因や不登校の子どもへの親の対応などについて、お話を伺いました。
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不登校は年々増加している?
不登校の子どもの数は年々増加の傾向にあります。ここ最近ではコロナ禍が大きな原因ですが、コロナの流行以前からも不登校の数は増えていました。
不登校が増加している原因のひとつは、時代に合わない詰め込み学習や、多すぎるクラスの人数、先生の多忙などにより、学校が子どもにとって適応しにくい環境になってきていることです。
そのほか、現在普及しているインターネットは親世代の人たちの幼少期にはなかったため、子どもへのネットリテラシーの教育がまだ手探り状態であること、長引く不況で親御さんたちがお子さんにかけられる時間や心理的あるいは金銭的な余裕が少なくなり、家庭の中での子育て力が低下していることも、不登校の増加に影響していると考えられます。
また昔に比べると、不登校は悪いことではなく、無理に学校へ行かせなくてもよいというように社会的な認識も変化しています。
不登校の3つの原因とは
不登校の原因は大きく3つに分けられます。
不登校の原因①:学校の問題
友だちや先生との人間関係で不適応が生じている場合です。
不登校の原因②:家庭の問題
昼夜逆転など基本的な生活習慣が乱れていることや 、親子の信頼関係が揺らいでいる場合などが挙げられます。
不安症や発達障害 など、お子さんが持っている特性に基づくものです。実際、発達障害の子どもは不登校になる割合が3~5倍ほど高くなり、不登校になったのでクリニックに行ってみたら発達障害がわかったというケースが多くあります。
不登校の子どもの心理状態
学校に対する不安や恐怖が原因で 、学校へ行けなくなるお子さんが多いです。その結果、社会や人との家族以外のつながりがなくなってしまって、孤立感や疎外感を感じる子どももいます。
一番よくないのが自己否定感です。「どうして学校に行かないの」など自分でも答えられない質問を投げかけられると、「みんなとは違う」といわれているような感じがして、自己肯定感や自尊心が下がります。学校へ行けないため 、集団生活の中での達成感や成功体験を得る機会が少なくなってしまい、それがさらに自己肯定感の低下につながるという悪循環に陥ってしまいます。「どうせ私なんて」という言葉が出てくると要注意です。
抑うつ状態になったり、ストレスによる身体症状が出ることもあります。
親が気をつけたい6つのポイント
不登校にならないように、あるいはすでにお子さんが不登校である場合は改善できるように、以下のことに気をつけてみてください。
①甘やかすことと寄り添うことを間違えない
子どもの言うことを何でも聞いて甘やかしてしまうと、学校へ行って自分の言うことを聞いてもらえない環境に置かれたときに、うまく適応できなくなってしまうことがあります。お子さんが自分で問題を解決する力が育つよう、寄り添ってあげましょう。
子どもとのかかわりが少ないと、親子の信頼関係がうまく構築できなことがあります。普段からの声掛けなど、意識してやってみてください。
③原因を多面的に考える
お子さんが学校に行きたくない理由として、たとえば「先生が嫌なことをいう」などと訴えると、親御さんとしてはつい、学校に問題があるのだろうと受け止めてしまいがちです。しかし、お子さんの訴えはひとつのきっかけであることが多く、学校へ行きたくない原因はほかにもある場合があります。不登校のおもな原因が、学校、家庭、本人であることを念頭に、いろいろな角度から原因を考えてみてください。
④子どもを自由にさせ過ぎない
子どもが自由過ぎると、親子関係が希薄になったり、子どもがなんでも好きなようしていいのだと思ってしてしまう可能性があります。適度なルールを作るなど、お子さんとコミュニケーションが取れるようにしましょう。
⑤子どもの間違った行動に対してははっきりだめだと言う
子どもをれないと、親子の立場が逆転して、親の言うことを聞かなくなってしまいます。子どもの間違った行動には、はっきりと間違いであることを伝えましょう。
⑥子どもへの対応に一貫性を持つ
子どもが同じことをしても怒ったり怒らなかったり、そのときそのときで対応が違うと、子どもは戸惑ってしまいます。一貫性を持った対応で、子どもとの信頼関係を築きましょう。
不登校の子どもにやってはいけない5つの対応
NG対応①:何もしない
専門機関などから「様子を見ましょう」といわれたときに、「何もしない」ことと誤解されるケースがありますが、何もしないと状況も変わらないので、お子さんとかかわりを持つようにしましょう。
NG対応②:学校などの関係機関と連携しない
不登校の原因が家庭にある場合、家庭の中から気づくのは難しいことがあります。客観的な専門家の視点を取り入れるためにも、関係機関とぜひ連携して取り組んでください。
NG対応③:親や先生など大人の願いだけで行動する
たとえば、「高校までは必ず行ってほしい」という親の願いをもとに行動すれば、子どもの想いは置き去りにされてしまいます。親も視野を広く持って、子どもの強みを見つける時間にしていきましょう。
NG対応④:親が察して子どもより先に動く
お子さんが要領を得ない様子で何かをやっているのを見ると、親としてはついつい自分でやってしまおうと思ってしまいがちです。しかし大人がやってしまうと、子どもが困難に立ち向かう力や、失敗しても先に進む力を育てることができません。お子さんがものごとに取り組むのを、必要ならアドバイスなどをあげながら、見守ってあげてください。
NG対応⑤:感情の起伏が激しい
子どもは親の感情に敏感です。親の感情の起伏が激しいと、子どもの心が安定しません。お子さんに余裕をもって接することができるよう、親御さんも心にゆとりをもってリラックスすることを心がけるとよいでしょう。
不登校の子どもに親ができる4つこと
①子どもの名前をたくさん呼ぶ
ひとつは、親子の関係をよくするために、お子さんの名前をたくさん呼んであげることです。人間にとって一番好きな言葉とは自分の名前だといわれています。そこで、子どもの名前をたくさん呼んであげること、さらに広げて子どもの好きなものに対して親も興味を持ち、一緒に会話を盛り上げていくことが効果的です。
②肯定感をあげるような言葉掛けをする
次に「コンプリメント」と呼ばれる肯定感をあげるような言葉掛けをしましょう。「あなたは人を笑顔にする力があるね」とか「手伝ってくれてありがとう」「助かったよ」など、自分は人のために役立てるのだと、自信をつけてあげられるような言葉をたくさん掛けます。自己肯定感が上がると、少しくらい失敗しても大丈夫だと思えるようになります。
③簡単なお手伝いで子どもに達成感を与える
コンプリメントするために、家庭でのお手伝いなど、成果を得られる機会を作ります。ポイントは、本人が得意なことや、次もまたやりたいと思えるようなものにすることです。たとえば靴磨きや洗濯物干しなど、簡単なお手伝いでいいので、達成感を得られる場を作ってあげましょう。
④家庭内で心理的安全性を与える
また、子どもが家庭内に居場所があるという心理的安全性を与えてあげることも大切です。子どもの呼びかけには1度で反応するよう心がける、子どもの小さな変化に気づいて、認める声かけをする、 子どもの写真を部屋に飾るなどを実践してみてください。
不登校のための支援・サポート機関
①教育センター
学校の上にある組織で、校長先生を通じて学校と連携してもらい、教育センターでの教育相談を受けることができます。
②適応指導教室
学習ができ、学校の代わりとなる場所です。適応指導教室へ行くと学校で出席扱いとなります。
③医療機関
精神科や、発達障害に詳しい小児科に行くと、いろいろな情報や知識を得ることができます。また、自治体から必要であると判断された場合 、申請を出すと受給者証がもらえて、放課後等デイサービスを利用できます。
家庭と学校以外の第三の居場所として、不登校の子どもたちが通える学校のような場所です。フリースクールへ行くことで出席扱いにしてもらえる仕組みもできつつあります。
子どもの発達に関する窓口で相談できます。
親が明るく過ごすことが大切
インターネットなどで調べてみると、昔不登校だったけど今はこんなことをやっていますといった不登校卒業生の情報がたくさんあります。不登校だからといって、悲観することはありません。親御さんの不安な気持ちはお子さんに共鳴します。
逆にいうと、親御さんが明るく楽しく生活すれば、それもお子さんに共鳴するのです。親御さんが安定した気持ちでいるためには、いろいろな専門機関と連携して、正しい情報や知識を得ることが大切です。
お子さんが周りと違うことに不安になるかもしれませんが、みんな違って当たり前。違うことは強みになるので、お子さんが自分の強みを生かしてどんな大人になるのか、楽しみにしていただけたらと思います。
【話を伺ったのは】
小学校・特別支援学校に13年勤務。現在は公認心理師・チャイルドカウンセラーとして、子育てに悩むママ、パパ向けに情報を発信している。ポジティブ行動支援セミナー開催中。