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新品で200万円だった「金のApple Watch」。中古価格20万円台の“今が買い時”なのか | ニコニコニュース

―[腕時計投資家・斉藤由貴生]―

◆K18のアップルウォッチ相場変遷

 腕時計投資家の斉藤由貴生です。

 私は、高級腕時計を『買って⇒楽しんで⇒買った値段と同じか高く売る』ということをモットーとしているのですが、そんな私が、今回Apple Watchについて考えてみたいと思います。

 今回、Apple Watchについて考えるといっても、私が取り上げたいのは第1世代のApple Watch Edition。これは、本物の18金素材で作られたApple Watchの最高級モデルです。

 Apple Watch2015年デビューしたスマートウォッチでありますが、当初の商品構成は、高級腕時計のそれを意識した内容となっていました。ケースサイズは38mm、もしくは42mmとなっており、ケース素材は基本がステンレス、そしてイエローゴールドローズゴールドが用意されていたのです。また、Apple Watch Sportsにはアルミニウムが採用されていました。

 デザインを手掛けたのは、2000年代IKEPODという高級腕時計デザインをしたことで知られるマークニューソン。Apple Watchは、IKEPODスマートウォッチ版といった感じであるため、デビューした時私は「うまい!」と思った記憶があります。

Apple Watchネックは商品寿命の短さ

 しかし、Apple Watchが出た当時、私が最も懸念したのは「何年使えるのだろう?」という点。通常の高級腕時計であれば、基本的に「ずっと使える」といえますが、Apple Watchといったスマートウォッチの商品寿命は「長くなさそう」と思ったわけです。

 実際、2023年現在では初代Apple Watchサポートは終了。ネット記事を見ると “初代Apple Watch2023年現在使っている”という人に対して、「頑張って使っている」という趣旨の記述が目立ちます。

 高級腕時計の世界での「2015年製」は“かなり新しい部類”だといえる反面、2015年製のApple Watchに対しては“古さ”を感じるといえるのです。

 こうなることは、2015年Apple Watchが出たときから容易に想像できたといえ、私に限らず多くの方が「スマートウォッチの耐用年数が長くない」ということを理解していたことだと思います。

 さて、今回話題の中心としたいのは、そんな2015年登場のApple Watch Edition でありますが、これは「買ってはいけない」のでしょうか。

 K18のApple Watch Edition は、定価が200万円といった価格帯であり、通常のApple製品がそうであるように「定価を大幅に下回る価格で販売される」ということもありませんでした(デビュー時において)。

 そのため、2015年Apple Watch Edition が出たときに、私はK18のApple Watch Edition を「最も買ってはいけない腕時計」だと思ったわけです。

 しかしながら、それから約8年が経過した今、私はこれを「買っても良い」と思っているのです。

 なぜ、2015年2023年で言っていることが全く違うのか、ここからはその理由を説明したいと思います。

◆K18のApple Watch Edition の価格推移

 K18のApple Watch Editionは、2015年デビューした際、税込128万円から218万円という価格で販売。まさに、高級腕時計のK18モデルと同等の価格で売られていたということになります。

 Apple Watch Editionは、通常のK18を使ったApple Watchというだけでなく、「通常の金よりも2倍固くなるようにした」という内容。特許まで取得したそうです。

 単なる「K18の豪華版」というだけに限らず、素材の製法にこだわって特許まで取得するというのがグッと来るポイントでありますが、スマートウォッチという観点からすると、120万円~という価格では絶対に手を出さないほうが良いとなります。

 さて、Apple Watch2016年に「シリーズ2」へと世代交代が実施されたわけですが、その際、最上級モデルであるEditionの位置づけが第1世代とは大幅に変更。K18は採用されず、セラミック製となったのです。

 その時点で、世代交代となったApple Watchですが、K18のEditionについての中古相場はどういった具合だったかというと、2016年時点では60万円台といったところだといえます。

 新品価格120万円に対して、デビュー1年後の中古相場が60万円台。これは、残価率で示すと50%といった数値。買ってから1年後で価値が半減したことになります。

 そして、2017年になるとApple Watch Editionは新品が安価で販売されるようになります。ネットを調べると、Apple Watch Editionの正規店である某百貨店2017年に70万円で販売(160万円引き)というニュースが出てきます。

 ですから、2015年に200万円といった価格帯で販売されたApple Watch Edition2017年までに70万円前後という相場になっていたといえます。

◆中古価格8万円が底値に

 また、それから1年後の2018年になると驚くべきことに、同じ某百貨店Apple Watch Editionをなんと8万円といった価格で販売。この時点での残価率は3%ということになります。

 とはいえ、この8万円という価格だと「欲しい」と思った人がたくさんいたようで、すぐに売り切れた模様。この際のことを私はリアルタイムで見ていたわけではないのでなんともいえないのですが、瞬間的に売り切れてしまったようで8万円での入手難易度は高かったといえます。

 この8万円という価格がApple Watch Editionの「底値」だったといえます。

 翌年2019年におけるApple Watch Editionの中古相場は20万円台前半といったところ。仮に、2018年に新品8万円で購入した方は「高く売れる」ということができたことになります。

 そして、2019年以降、Apple Watch Editionの中古相場は20万円程度という水準から変わらず。今年8月時点でも約24万円という金額で落札されている形跡があります。

 上記、Apple Watch Editionの相場変遷をまとめると以下とおりです。
 
2015年128万円~218万円(新品価格)
2016年2017年:約70万円(値引きされた新品)、約65万円(中古販売実績額)
2018年:約8万円(値引きされた新品)
2019年から現在:約23万円(中古販売実績額)

◆相場を見ると買っても良いといえる

 Apple Watch Editionは、デビューから3年ぐらいの間、相場が不安定な状況でしたが、2019年から4年間相場が安定した状態となっています。

 それゆえ、今Apple Watch Editionを25万円程度で買ったとしても「買った値段と同額」で売れる可能性があるといえます。また、万が一相場が下がったとしても、損する額は、2015年に買った場合と比較にならないほど低いでしょう。

 つまり、私の考えとしては、2017年頃までの相場で買うのは「なし」だけど、2018年以降の相場で買うのは「あり」という結論であるわけです。

 さらに、Apple Watch Edition は長いアップルの製品史からみてもかなり異端な作品。K18素材のものをAppleが売るということ自体が珍しく、特許まで取っているというのがツボであります

 そういった意味でApple Watch Edition は、Appleファン目線という観点では、かなり重要な製品だといえるため、コレクション需要はそれなりにあるといえます。

 200万円という定価から、一時8万円という売値まで下がったApple Watch Edition 。その後20万円台前半といった相場に落ち着き今に至るわけですが、私の感覚からすると、今の相場では「買い」だと思うのです。

 スマートウォッチというガジェット目線では、完全に「旬を終えた」といえるApple Watch Editionですが、歴史的価値としては今後「旬」を迎えるかもしれない。この矛盾のようにも見える結論が、個人的にはとても面白いと感じています。

斉藤由貴生】
1986年生まれ。日本初の腕時計投資家として、「腕時計投資新聞」で執筆。母方の祖父はチャコット創業者、父は医者という裕福な家庭に生まれるが幼少期に両親が離婚。中学1年生の頃より、企業のホームページ作成業務を個人で請負い収入を得る。それを元手に高級腕時計を購入。その頃、買った値段より高く売る腕時計投資を考案し、時計の売買で資金を増やしていく。高校卒業後は就職、5年間の社会人経験を経てから筑波大学情報学群情報メディア創成学類に入学。お金を使わず贅沢する「ドケチ快適」のプロ。腕時計は買った値段より高く売却、ロールスロイスは実質10万円で購入。著書に『腕時計投資のすすめ』(イカロス出版)と『もう新品は買うな!』がある

―[腕時計投資家・斉藤由貴生]―
18金素材のApple Watch Edition

(出典 news.nicovideo.jp)

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