相談者の女性は、友人とクリスマスプレゼントを交換する約束をしていました。女性が先にプレゼントを渡したところ、連絡が途絶え、1カ月後に連絡すると突然「友達を辞めた」と宣言されてしまいました。
女性が「話が違うから返してほしい」と頼むと、友人は「早めに郵送して返すよ」と言ったものの、一向にプレゼントは返ってきません。
元々プレゼント交換を予定していたのに、相手からプレゼントがもらえなかった場合、あげたものを返してもらうことはできるのでしょうか。池田誠弁護士に聞きました。
●友人はもらったプレゼントを返す義務を負う
結論から言うと、プレゼント交換は「交換契約」にあたり、法律上、相手にもプレゼントを交付させる義務を発生させるものです。万が一、相手がその義務に反した場合、契約を解除して自分のあげたプレゼントを返還させることができる権利が発生します。
民法には、「交換契約」という契約の類型が定められています。
いわゆるプレゼント交換は、お金以外の財産をお互いに贈り合う契約なので、文字どおり、「交換契約」にあたります。財産はモノだけでなく、「肩叩き」をしてもらう権利などの債権も対象となりえます。
交換契約は、契約内容を書面化することを要件とはしていないので、口頭での契約でも成立し、相手に交換を請求できます。もちろん、裁判などでは、契約した事実をどうやって証明するのかが重要な問題になるため、書面やメールやSNSなどを通じ、文字にして約束したことを後日証明できるようにしておいた方が良いことは間違いありません。
今回のケースでは、友人が「友だちを辞めた」と申し出て、自分からはプレゼントを贈らない態度を明確にしているようですから、「全部の履行を拒絶する意思を明確に表示した」(民法第542条第1項第2号)場合にあたると考えられます。この場合、相談者の方は、相手との交換契約をただちに解除することができます。
また、プレゼントを、クリスマス用の品物に限定していた場合などには、「契約の性質…により、…一定の期間内に履行しなければ契約をした目的を達することができない場合」(同第4号)にあたりますので、クリスマスを過ぎた時点で当然に解除ができることになります。
契約が解除されると、双方が「原状回復義務」を負います。このことから、相手の友人は、相談者に対し、もらったプレゼントを返す義務を負うことになります。
現実には、今回のようなご相談より、自分があげたプレゼントより明らかに安いものが贈られた場合などがトラブルになることが多いと思います。そういったトラブルを避けるためにも、交換するプレゼントの価格帯を含む条件をあらかじめ文字化して決めておき、参加者に周知し、賛同を得ておくことが大切です。
【取材協力弁護士】
池田 誠(いけだ・まこと)弁護士
証券会社、商品先物業者、銀行などが扱う先進的な投資商品による被害救済を含む消費者被害救済や企業や個人間の債権回収分野に注力している下町の弁護士です。債権回収特設ページURL(https://nippori-law-saikenkanri.com/)
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