進む若者のテレビ離れ…若者にテレビを見てもらうには? Z世代とXY世代で徹底議論
日本代表の快進撃で盛り上がった「FIFAワールドカップカタール2022」。その裏で躍進したのが、インターネットテレビ局「ABEMA」。日本vsスペイン戦では、視聴者数が1,700万人を突破。渋谷ではスマホで試合を観戦する人も。
近年叫ばれる「Z世代のテレビ離れ」は顕著で、総務省の最新の調査では、10代・20代はテレビよりもネットの利用時間が倍以上。近年は広告費もインターネットがテレビを上回っています。
Z世代にテレビを見てもらうためには、何が必要なのか。まずはZ世代を代表し、慶應ビジネススクール2年(MBA)の池田颯さんが「ローカル局の価値を再認識へ」と主張します。
池田さんは「キー局」は不動産収入があるため「切羽詰まっているものの、新しいチャレンジができる」とその強みを語ります。
一方、地域に根付いたTOKYO MXなどの「ローカル局」は、不動産による売上などが少なく「(経営的には)本当に厳しい」と窮状を解説。そのため、存在意義が問われることもあるものの、池田さんは「僕は、ローカル局は意味があると思う」と期待を寄せます。
XY世代のライター・ヨッピーさんは、Z世代にローカル局を見てもらう手段として“ネット配信”を挙げます。「ラジオも聴取率が落ちていたなかで『radiko』が出て、全国誰もがどの放送局も聴けるようになり持ち直した。その仕組みをなぜテレビでもやらないのか」と疑問を呈します。
TOKYO MXでは、キー局に先駆けて2014年から無料動画配信サービス「エムキャス」を展開中。以前から全国にリアルタイムでネット配信していることを知ったヨッピーさんは「そうなんですか!? 素晴らしい! めちゃくちゃ早いですね」と驚きの声。
キャスターの堀潤もヨッピーさん同様、ネットの活用は不可避と言います。ただ、そこには障害もあり、2000年代前半、堀が当時在籍していたNHKがネットとの融合を望み、一度は進んだものの、最終的には頓挫。その理由は、民放キー局がネット配信してしまうとローカル局のビジネスモデルが成立しなくなってしまうからだったと説明。
池田さんは、それこそまさに「イノベーションのジレンマ」と指摘し、「誰かが新しいチャレンジをすると、逆に既存のローカル局の売上が落ちてしまう」と頭を悩ませます。そして、コンテンツに関しても言及。例えば、アメリカの2021年の視聴率ランキングベスト50を見ると、そのうち40がスポーツの生中継。
そうした背景が、今回のABEMAの躍進にあると言い「基本的にコンテンツ力は資金力のあるところ、ドラマなどが作れる『Netflix』などが勝つ。そして、スポーツの生中継は堅い。こうした状況は、ローカル局は(戦うには)難しいという話がある」と示唆。
ここで堀は、イギリスの公共放送「BBC」を例に挙げ、「BBCは早い段階でライブ配信に力を入れていた。いろいろ課題はあるが、大きく舵を切った。日本は乗り遅れていいのか」と危惧。そして、「電波オークションをやったっていい。いろいろな人が参入できるような電波の使い方があればいいのに」と声を大にします。
そんななか、Z世代のFridays For Future Tokyoオーガナイザーの黒部睦さんは、若者のテレビ離れ以上に、前述の総務上の調査で「30代がそんなにテレビを見ていたことにビックリ」と驚きつつ、若者のインターネットメディア感について「(メディアを見るにしても)「新たなアプリを入れたりする必要があったりすると止まる、躊躇してしまう。だから、ローカル局をまとめたアプリなどがあれば」とテレビ版radikoを切望。
◆ローカル局こそ地域コミュニティにおけるみんなの“居場所”に
では、若者はどんなときにテレビを見るのか。街頭で聞いてみると「お笑いの大会などを見る。ネットニュースですぐに結果がわかってしまうが、生で見たいので」(17歳 男性)、「音楽番組の生放送など、後で見られないもの」(女性)、「ドラマ。あとはニュースも流れていれば見るかなというくらい。朝の支度中は時計代わり」(16歳 女性)といった意見や、「見ない」(女性)という声もありました。
Z世代が求めるメディアの役割に関する調査を見ると、テレビに求めるのは「信頼できる情報」。インターネットやSNSは「社会の空気感を知る」。そして、ネット動画は「価値の高い内容・自分の好きなものや感動」でした。
さらに、人気コンテンツを民放番組と動画サービスで比べてみると、民放番組は上位から「ニュース・報道」、「天気予報」、「国内ドラマ」。動画サービスは「映画」、「国内ドラマ」、「アニメ」となっています。
この結果に、ヨッピーさんは「コンテンツを見るときはネット経由で見る人が多いのかな。テレビは速報、情報として取るもので、コンテンツはネットという棲み分けになっているんですかね」と率直な印象を語ります。
ここで池田さんは、改めて論点を「ローカル局」に戻し、世の中が日々移り変わるなか、地域に根付いたメディアはどうするべきか投げかけると、堀、ヨッピーさんともども「コミュニティ」と明言。
ヨッピーさんは「ローカルのコミュニティは、テレビ局などが主導してやれることがまだたくさんある。例えば、地元の祭りに若い世代が入ってこなくて困っているとか。ローカル局だからこそ地場のコミュニティの盛り上げを行い、それこそ事業なども一緒にやる。そうしたことはまだまだできると思う」と自身の考えを述べます。
堀はローカル局こそ“居場所”になるべきと主張。なぜなら、人々が集まるにも適正範囲があり、ローカル局の規模感こそ最適で、なおかつそれが強みだから。当番組でもその一環として常々双方向性を重視してきたとし「(ローカル局は)本当のメディアの役割、媒介役になれる良い塩梅のコミュニティサイズ」と実感を語ります。
番組Twitterの「スペース機能」に参加していた視聴者からは「ローカル局は、コンテンツを選ぶことが必要。テレビだろうがラジオだろうが面白ければ見る」、「ローカル局に期待するのは事実報道。スタジオ内で盛り上がっていても、視聴者は引いていると思うので、その温度差を感じてほしい」といった意見もありました。
最後に、Z議会を代表して池田さんが提言を発表。それは「顔が見える居場所(近さ)」。
これまでインターネットは誰もが主体的に参加できるもの、テレビは参加できずに見ているだけのものというイメージでしたが、「堀さんが言ったように、テレビだけど地域のコミュニティに参加できるのが、今のローカル局の魅力」とテレビの新たな強みを強調します。
池田さんの祖父母は北海道に住んでいて、北海道で最も読まれている新聞は、いわゆる大手全国紙ではなく地方紙だとか。そして、なかでも池田さんの祖父が真っ先に見るのは「お悔やみ欄」。なぜなら、そこには知り合いが載っている可能性があるからで「そうしたことが僕は温かいと思うし、メディアはまだ信頼性が最も高いとされているので、そこを上手く組み合わせて居場所になれたらまだ価値はあると思う」とローカル局の今後に期待します。
一方、黒部さんは今回の議論で度々上がっていた地域コミュニティに対し「そもそも若者はそこから離れている」と指摘。その上で「地域コミュの良さを若者に!!」と訴えます。「地域コミュニティの良さ、繋がり、そこで自分の力を発揮できることなど、もっと周知しないといけない。例えば、政策についても、国に対し自分の住んでいる地域であれば意見ができることを実感できていない」と惜しみます。
そして、最後にヨッピーさんはテレビ関係者に向け「結局はもっと頑張れという話。双方向性や地域に入っていくことなど、テレビ局の人が頑張れることはいろいろある。打つ手がないわけではない」とエールを送っていました。
<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag
牛カルビ
若者の…っていうかおっさんの俺もテレビから離れて久しい。仕事してると決まった時間に30分なり60分という時間を取られるのが厳しいし録画もダルい。全て配信形式にして好きな場所・好きな時間に見られるようにしないとどんどんオワコン化するんじゃない?生活スタイルはどんどん変わってる。魅力的な動画配信事業者もたくさんある。テレビだけ何も変わらず生き残れる訳がない。 |