消したい黒歴史を1つだけ変えるとしたら?現世に起きた救済措置に「これはいい話」と話題【漫画家に訊く】 | ニコニコニュース
高校生の前に現れた死神。”救済措置“として、青年の消したい過去3つのうち1つだけを変えてくれるという、無冬季(@After_man_gene)さんの「死んでも死にきれないクソ陰キャと金髪が似合うギャル」がおもしろい。
■主人公の消したい3つの過去とは?
X(元Twitter)で10万いいねを超えている「死んでも死にきれないクソ陰キャと金髪が似合うギャル」。本作を描いたきっかけを無冬季さんに訊いた。「この漫画は『死出の枝道』というタイトルで、2013年頃に漫画賞に投稿した作品です」
青年が消したい3つの過去は、「小学校でのお漏らし」「イジメに耐えきれず同級生を傷つけたこと」「犯してしまった万引き」と、辛いものばかりだった。この3つの中から1つだけ、過去を変えたいと青年が選んだのはーー?
漫画の冒頭、死神による救済措置というインパクトのある出だしに引きこまれる。忘れたい過去を修正してくれる部分に共感する読者が多く、「当時は、そういう消したい過去的なことはすごく多かったはずです。良くも悪くも、過去の苦々しい記憶を許したくない潔癖症じみた若い負のエネルギーを駆使して描いた作品なんだと思います」と、無冬季さんは語る。
過去はどれも確かに消し去りたい記憶だったけれど、「失望」や「諦め」ではなく「後悔」を選んだ選択については、「主人公が根暗で陰湿というひねくれた設定ですが、最後に選ぶのは見栄や体裁ではなく“誇り”なのだという、わかりやすいカタルシスを強調する一助になってるんだな、と拙作なりに見どころを感じます(無冬季さん)」
本作のコメント欄には「死ぬ前笑ってるのに、生き残って泣いてるこの対比エモい」などの考察も多い。このことについて伺うと、「ほかにもいろいろ考察されて、深い裏設定がいくつも読み解かれてましたが、全部偶然です。才能ある読者さんにたくさん発見してもらえて、ありがたい話です。ただ、質問の部分に限って言うと、最初と最後で主人公に対比が生じるというのはストーリーテリングの定石なので、実はそうなるべくしてなってるというだけのことです。しかし、そこに注目して感じ入ってもらえてるということは、ドラマの展開が上手くいったんだなという手応えがあるので「やったぜ!」って感じです(無冬季さん)」
たくさんの方に読まれた10万を超えるいいねについては、「感激でした。これを描いていた頃の幼くて鬱々していた自分が、時間差で報われた思いです。すごく自己肯定感を補強してもらえました。今の自分は、ちょっとこの作品を正視できないので、自分の黒歴史が大拡散された感覚があって、うれしさ半分はずかしさ半分です(無冬季さん)」
選んだ1つの過去を変えることで、現世が変わってしまうラストにも注目したい。そのほか、本作「死んでも死にきれないクソ陰キャと金髪が似合うギャル」を含めた「安定志向で工業系に進学しても人間は狂うよ」「未来人世代シリーズ」のエピソード「勝手にしやがれ 131ver.」を収録した無冬季さんの作品は、Kindleで無料で読むことができる。累計15万いいね以上の反響を集めた作品たちを、ぜひチェックしてみよう!