「逮捕状が出ています」それ全部詐欺です…警察官をかたる手口が増加 弁護士が解説 | ニコニコニュース
「あなたに逮捕状が出ている」などと警察官をかたる人物から連絡が来て、「逮捕を避けるため」などと嘘の名目でお金を振り込ませる詐欺が増えているそうです。
読売新聞(1月1日付)によれば、特殊詐欺被害が「東京都内で昨年1~11月に594件発生し、被害額は前年同期比約250倍の約41億7800万円」にのぼるといい、深刻な被害実態があります。
おおよその手口としては、警察官であると嘘をついて、「あなたが犯罪に加担している可能性がありますので、調査に協力してください」、あるいは「犯罪被害に遭われている可能性があるので、調査に協力をお願いします」などと言って、LINEなどSNSに誘導。最終的にお金を振り込ませるものです。
この間、偽の逮捕状や警察官の身分証明などを見せることもあるそうです。
お金を振り込ませる方法としては、たとえば、逮捕を防ぐために「保釈保証金」を支払わなければならないとか、マネーロンダリングが行われた可能性があるから紙幣を確認したい、などと言うようです。
このような詐欺にだまされないようにするためには、どうしたら良いのでしょうか。
●「これから逮捕します」という連絡は来るのか
「逮捕」は、「罪証隠滅」(証拠を隠したり、破壊したりすること)や、「逃亡」を防ぐためのものです。このような事情が認められない場合には、逮捕の必要性を欠き、逮捕できません(刑事訴訟法199条2項参照)。
警察がわざわざ「これから逮捕します」と連絡をしてしまえば、逮捕されるまでに証拠を隠したり、逃げたりできてしまいます。したがって、警察の方からわざわざ「これから逮捕しますよ」という連絡が来ることは考えにくいです。
●お金を払うことで逮捕を免れることはできるのか
「お金を払えば逮捕されなくてすむ」という法的な制度はありません。
ここで「保釈」という制度を思い浮かべる人も多いと思います。しかし、保釈というのは起訴された後の制度です。逮捕された後、勾留という手続を経て、10日〜23日くらいで起訴されるかどうかが決まるのですが、そこで起訴されてしまった場合に初めて、保釈という制度が問題になります。
ですから、「逮捕を防ぎたければ保釈保証金を支払ってください」というのは、法的に誤りであって、そのようなことを言われた場合には詐欺であることが明らかといえるでしょう。 なお、保釈保証金は裁判所に納めます。警察署に納めることもあり得ません。
さらに、「マネーロンダリングの調査のために紙幣を調べたい」というのも、本当に警察から疑われている人は、逮捕された上で手持ちのお金を押収されて調査されるでしょう。
任意に提出してくださいなどと申し出たら、その間に紙幣を処分されたり、逃げられたりされてしまうからです。そのうえ、紙幣を提供したから逮捕を免れられるというわけでもありません。
●その他の手口
なお、「お金を振り込んでもらい、犯罪で得たものかどうかを調査する」というのも詐欺です。そもそも、そのお札が「犯罪で得たものかどうか」を調べたいのであれば、そのお札自体を調べなければなりません。しかし、お札を銀行に振り込んでしまうと、その時点で同じお札かどうかは確認できなくなってしまいます。
また、警察がLINEやその他の携帯アプリで一般の方と連絡を取ってきたり、LINEのビデオ通話で逮捕状を見せることもありません。
令状の呈示は書面で行われており、スマホ画面等の電子機器による令状の呈示は現時点では認められていません。逮捕する場面でもないのに逮捕状を見せることもありません。
このように、警察官がLINEでやりとりをしようと言ってきたら全て詐欺といって良いでしょう。
ほかにもいろいろな手口はあると思いますが、途中の話がどうであれ、金銭を支払うかどうかで、逮捕されるかされないかが変わるという話は全て詐欺といって良いと思います。
細かくいえば、犯罪被害者と逮捕前に示談をすることで、逮捕されない、というケースはありうると思います。しかし、警察からわざわざ「示談すれば逮捕されない」ということを連絡したり、お金の振込を警察が仲介することはありません。
●連絡が来たら
すぐに警察に連絡しましょう。
その際、連絡してきた人(犯人)が教えてくれる電話番号は嘘の番号である可能性が高いですから、ご自身で警察署の電話番号を調べて電話するか、すぐに信頼できる知り合いに連絡を取って、一緒に警察に連絡する、などの対応をすべきだと思います。
やってはいけないのが、焦って一人で対応してしまうことです。警察から連絡が来る、という状況は多くの人にとって慌ててしまうと思いますが、身近な人や、本当に警察だとはっきり分かっている人とつながることが大切だと思います。