現行制度は税負担が重すぎる…
JAFの要望書に記載されている要望事項は大きく分けて以下の通りです。
2. 税負担のさらなる増大への反対
3. 先進安全自動車(ASV技術の導入車)に対する優遇措置の強化
このうち、もっとも大きなボリュームが割かれているのが、「1. 自動車税制の簡素化と、自動車ユーザーの負担軽減の実現」なので、本記事ではもっぱらこの項目について取り上げます。
「カーボンニュートラルに向けた議論を機会として捉え、過重で不合理な自動車税制の簡素化と、自動車ユーザーの負担軽減の実現」ということで、今後、EV(電気自動車)が普及していくことをふまえた議論になっています。
1. 自動車税の負担軽減と「恒久減税」の対象拡大
まず、自動車税の負担軽減を求めています。
その背景として、日本の自動車取得・保有についてかかる税金が欧米諸国(イギリス、ドイツ、フランス、アメリカ)と比べ非常に大きいこと、欧米では自家用乗用車に自動車重量税と同種の税金を課していないことを、データとともに指摘しています。
あわせて、「自動車税の恒久減税」の対象となる車両の範囲の拡大も訴えています。すなわち、2019年10月に「自動車税の恒久減税」が行われましたが、その対象は2019年10月以降に新車新規登録を受ける自家用乗用車に限られています。
この点について、恒久減税の対象を、現在保有している自動車一般に広げるべきであると主張しているのです。
税制のあり方を設計する際には、「担税力」という考え方がきわめて重要です。
担税力とは、納税者が経済的に顕著な苦痛を感じることなく、かつ、社会的に許容できる範囲で、税金を負担することができることをいいます。租税の公平性を確保するうえできわめて重要です。
担税力は、以下の2つの要素からなります。
・納税者が経済的に顕著な苦痛を感じることがない
・社会的に許容できる
たとえば、現行の消費税の軽減税率は、担税力の考え方のあらわれです。
すなわち、生きていくのに不可欠な食料品等については、税負担を重くすると納税者が顕著な苦痛を感じるうえ、社会的にも許容できないということで、担税力が低いと考えられているということです。
自動車税が創設された1950年においては、自動車を保有する人は一部の限られた富裕層に限られていました。富裕層は担税力が高いので、重い自動車税を課しても問題なかったかもしれません。
しかし、今日、自動車は一般国民に広く普及し、かつ、特に公共交通機関が発達していない地方においては日常生活や仕事にとって有効な交通手段として必要不可欠なものとなっています。
したがって、自家用乗用車に対し重税をかけると、納税者が顕著な苦痛を感じる可能性があるといえるため、自動車税の負担は大いに見直す余地があるといえます。
2. 自動車税の「環境性能割」の廃止
自動車税の「環境性能割」の廃止を求めています。
自動車税の「環境性能割」は、自動車を取得した初年度に課税され、燃費のよい車ほど税率が軽減されるものです。燃費性能に応じて、登録車であれば車両価格の0~3%、軽自動車であれば車両価格の0~2%が課税されます。
この自動車税の「環境性能割」について、2019年9月に廃止された「自動車取得税」と入れ替わりで同年10月から導入された経緯をとらえ、「自動車取得税の単なる付け替えのようなもの」であり、廃止すべきであるとしているのです。
たしかに、この経緯をとらえれば、「付け替え」の側面は否定できません。実際に、経済産業省のHPをみると露骨なまでにその意図がみてとれます。
しかし、この点については、「単なる付け替え」とまではいえないかもしれません。
すなわち、自動車取得税はもともと道路整備に充当するための「道路特定財源」という扱いだったのが、2009年度の税制改正で使途が限定されない「一般財源」になったものです。
これに対し、自動車税の「環境性能割」は、二酸化炭素排出削減の見地から、燃費のいい車両ほど優遇するというものです。
したがって、両者は課税の根拠が異なっており、「単なる付け替え」とは言い難いものがあります。
なお、JAFは、自動車取得税について「道路特定財源」としての存在意義を失った2009年の時点で廃止されるべきだったという立場をとっています。その観点からは、たしかに、せっかく自動車取得税が廃止されたのに、入れ替わりに似たような税金が創設されたということで、許容できないだろうということは理解できます。
3. 自動車重量税と「当分の間税率」の廃止
自動車重量税についても廃止を求めています。
理由は、先述の2019年に廃止された「自動車取得税」と同様、道路特定財源の一般財源化により、課税根拠を喪失しているということによります。
しかし、ここで重要なのは、自動車重量税の存廃自体というより、JAFが、「上乗せされ続けている『当分の間税率』は即刻廃止すべき」と訴えていることです。
現行の税率は、自動車重量税が道路特定財源だったときに、道路整備の財源が不足することを理由に暫定的に引き上げられたものが、一般財源化した後も特段の理由もなく「当分の間」引き継がれているものです。
たしかに、道路特定財源から一般財源に変わったのであれば、その存在意義や根拠も変化しているはずです。そうであるにもかかわらず、税率、しかも暫定的なはずのものが引き上げられたままというのは、合理性を欠くということができます。
4. ガソリン税の「当分の間税率」の廃止
自動車重量税と同様に、ガソリン税等に上乗せされ続けている「当分の間税率」についても、論理的な説明もなく追加負担を求めているものであり、直ちに廃止すべきとしています。
この点も、自動車重量税についてと同様、現行の「当分の間税率」は合理性を欠くといえます。
5. 二重課税の解消
現行制度の下では、ガソリン価格のなかにガソリン税が含まれており、全体を包括して消費税が課税されるしくみになっています。つまり、税金に税金が課税されているということです。JAFは「Tax on Tax」と表現しています。
これは、講学上「二重課税」または「重複課税」といわれるものであり、課税権の濫用と批判されます。
同様の問題はたばこ税、酒税にもあり、長年常態化し、事実上放置されていますが、決して好ましいものではなく、解消されるべきです。
6. カーボンニュートラルの実現に向けて納得できる自動車税制に
カーボンニュートラルを進めるにあたって、減税などの負担軽減を前提に自動車ユーザーが納得できる自動車税制のあり方の検討を求めるとしています。
すなわち、CVや水素自動車の普及が進むと、ガソリン車やハイブリッド車も含め、自動車の税制全体を整合的なものに組み直さなければならなくなります。
この点については、ちょうど、10月26日の鈴木俊一財務大臣が参議院予算委員会で注目すべき発言を行っています。EVに対する課税のあり方について、「走行距離課税は一つの考え方である」と述べたのです。
「走行距離課税」とは、自動車の走行距離に応じて課税する制度です。鈴木財務大臣はその理由として、EVは車体が重いため、道路の維持補修の負担が増大するということを挙げています。
しかし、車両の重量に応じて課税される税金にはすでに自動車重量税があり、それとの整合性についての説明が困難です。
しかも、EVについて「走行距離課税」を採用するのであれば、他のガソリン車等についても同様に採用するのか否かという問題が発生します。
今回、JAFが要望書を公表したタイミングと、鈴木財務大臣がEVに対する課税のあり方に言及したタイミングがほぼ同じだったことについて、単なる偶然だというには躊躇を覚えます。時代の流れのなかで、自動車に関する現行の税制がもはや維持できなくなってきていることを端的に示すものであると考えられます。
<このニュースへのネットの反応>
「国・地方自治体の整備する一般道を走る」のがおおまかな乗用車だから、税の種類・名目は変わっても取られる金額は変わらんだろうね。
欧州は自動車税は安いけど、代わりにガソリンの税金が高いって聞いたことがある。自家用車は確かに便利なんだけど、沢山の人が使うと発展がめざましいアジア諸国みたいに酷い渋滞と大気汚染が起きる。インフラの整備が進んだ先進国で、公共交通に誘導する施策しては、まあ、有りかなと思うな。
財務省の工作員湧いてるな
ひとり一台、車がないとろくに生活できない地域では税金面だけでももうすこし軽減してやって欲しいとは思うな。
安全性能で税金を変えてもいいんじゃない?