◆年金だけで「普通の生活」は送れる!?
老後不安で真っ先に頭をよぎる老後資金。しかし、老後2000万円問題に端を発するお金の不安は実態のない虚像に踊らされているだけだった。
金融庁が発表した、「老後20~30年間で約1300万~2000万円が不足する」、通称“老後2000万円問題”。世の人々の不安を煽ったが、経済コラムニストの大江英樹氏は「ウソ」と断言する。
「2000万円とは総務省の『高齢夫婦無職世帯の家計収支』というデータが独り歩きしたもので、毎月の赤字額である5万5000円に平均寿命をかけて割り出されています。
しかし、その支出の内訳は違和感だらけです。たとえば、1か月の食費が夫婦2人で6万4444円は明らかに高すぎです。普通に生活していれば3万5000円ほどにしかなりません。そもそも、なぜ赤字前提なのか。貰える年金額はわかっていますから、支出を抑えればいいだけです」
◆毎月の不足額はわずか1541円
毎年の収支が変化するのは年金生活も同じだ。たとえば、新型コロナ禍で特別給付金が支給された’20年は、実収入額が’17年よりも4万8565円増え、自粛生活で支出も4413円減少。
結果、毎月の不足額はわずか1541円に平均寿命をかけても“老後55万円問題”にしかならない。要は、「その年の不足額×30年」という計算はかなりいいかげんなのだ。
◆年金額だけで生活する実証実験の結果は…
「私は年金受給の年を70歳に繰り下げましたが、65歳から支給される年金額だけで生活する実証実験を行ったんです。結果、貯金までできました。会社員は贅沢しなければ、年金だけでも十分です」(大江氏)
経済学者の髙橋洋一氏もこの問題について「金融庁が商品を売りたい金融機関の口車に乗ってしまっただけのくだらない話」と一蹴。あっけない真実に拍子抜けだ。
◆★真実!サラリーマンならば、年金で十分生活可能
【経済コラムニスト 大江英樹氏】
野村證券で個人資産運用や企業年金コンサルに従事した後、’12年に独立。資産運用などに関するさまざまな活動を行う。著書多数
【経済・数量政策学者 髙橋洋一氏】
’80年、大蔵省に入省し内閣参事官などを歴任。著書に『国民のための経済と財政の基礎知識』や『財務省、偽りの代償』(扶桑社刊)など
取材・文/週刊SPA!編集部 イラスト/田川秀樹 図版/ミューズグラフィック
※11/29発売の週刊SPA!特集「間違いだらけの[老後不安]」より